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連載 ・ 全20話
旧約聖書 ― 人類最古の物語が世界を動かした
天地創造から洪水、バベルの塔まで。旧約聖書の冒頭をいろどる物語は、それより古いメソポタミアの神話と驚くほど似ている。信仰の真偽には踏み込まず、人類最古級の物語文学として、また古代オリエント史の証言として、この巨大な書物の正体に迫る連載第1話。
- 01 はじめに言葉ありき ― 世界で最も読まれた物語の正体 天地創造から洪水、バベルの塔まで。旧約聖書の冒頭をいろどる物語は、それより古いメソポタミアの神話と驚くほど似ている。信仰の真偽には踏み込まず、人類最古級の物語文学として、また古代オリエント史の証言として、この巨大な書物の正体に迫る連載第1話。
- 02 洪水を生きのびた男 ― 粘土板が語る、もう一つの箱舟 1872年、大英博物館の一室で、ある研究者が粘土板の楔形文字を読み解いて声をあげた。そこには旧約聖書のノアの洪水とそっくりな物語が刻まれていた。世界最古級の文学ギルガメシュ叙事詩と箱舟伝承の不思議な響き合いを、断定を避けつつ古代オリエント史のなかでたどる連載第2話。
- 03 故郷を捨てた男 ― アブラハムと、三つの宗教が仰ぐ父祖 行く先も知らされぬまま故郷を旅立った一人の遊牧の長。やがて彼はユダヤ教・キリスト教・イスラームという三つの宗教が共通の父祖と仰ぐ存在になる。アブラハムの物語を、古代オリエントの遊牧社会と後世への影響という二つの視点から、断定を避けつつ読み解く連載第3話。
- 04 夢を読む若者 ― ヨセフとエジプト、そして隷属への道 兄たちに売られ、異国の牢につながれた若者が、夢を読む力ひとつでエジプトの宰相にまで昇りつめる。ヨセフの物語は一族をエジプトへ導き、やがて長い隷属の時代へとつながっていく。古代エジプトという大国を背景に、文学としての完成度と歴史の問いをあわせて読む連載第4話。
- 05 神々の戦いと、言葉による創造 ― メソポタミア宇宙論との対話 創世記の天地創造は、それより古いメソポタミアの宇宙論と多くのモチーフを共有している。原初の水、混沌、闇。しかし神々が殺し合う叙事詩と、言葉ひとつで世界が整う物語のあいだには、決定的な違いもある。エヌマ・エリシュとの対話から、創造の物語が何を語ろうとしたのかを読む連載第5話。
- 06 葦の海を渡る ― 出エジプトと、史実をめぐる問い 重い労役に苦しむ民を率い、モーセは海を渡る。出エジプトは旧約聖書を貫く中心の物語であり、解放の象徴として語り継がれてきた。一方で、その出来事を確実に裏づける外部史料は乏しい。文学としての力と、歴史としての慎重な問いを、どちらも手放さずに読む連載第6話。
- 07 十戒と契約 ― 古代オリエントの法、そして近代への遠い影 シナイの山で授けられた十戒は、人と神とのあいだに結ばれた契約として描かれる。それより古いハンムラビ法典など、古代オリエントには多くの法が先立っていた。共通点と相違点をたどりながら、聖書の律法が後世の法や倫理に残した遠い影を読む連載第7話。
- 08 約束の地と『ヘレム』 ― 苛烈な命令を、どう読むか ヨシュア記は、約束の地カナンの征服を語る。そこには、住民を滅ぼし尽くせという苛烈な命令――ヘレムが記されている。この記述をどう読むべきか。考古学の慎重な知見と、倫理をめぐる問いを手がかりに、断罪も正当化もせず、品位をもって向き合う連載第8話。
- 09 唯一神はいつ立ち上がったか ― エルとヤハウェ、一神教の誕生をめぐって 旧約聖書の神は、はじめから唯一の神だったのか。エル、アシェラ、ヤハウェ。古代カナンには複数の神々がいた痕跡が残る。砂漠の砦から出土した碑文を手がかりに、多くの神々を背景とした世界から一つの神への信仰が立ち上がっていく、その長い過程をめぐる諸説を慎重にたどる連載第9話。
- 10 士師と王の誕生 ― サウル、ダビデ、ソロモンと統一王国の謎 ばらばらの部族をまとめた士師たちの時代から、最初の王サウル、英雄ダビデ、栄華のソロモンへ。旧約聖書が描く壮麗な統一王国は、どこまで史実だったのか。ダビデの名を刻んだとされる石碑の発見をはさんで、考古学者たちが最小派と最大派に分かれて争う論争を、結論を急がず慎重にたどる連載第10話。
- 11 聖書のなかの女性たち ― サラ、ハガル、ルツ、エステル 男性の名で語られがちな旧約聖書のなかで、女性たちはどう描かれてきたか。世継ぎをめぐって引き裂かれたサラとハガル、異邦の地から忠誠を貫いたルツ、王宮で民を救ったエステル。彼女たちの物語の語りの構造と、当時の社会、そして現代の読み直しを、結論を押しつけずにたどる連載第11話。
- 12 預言者たちの叫び ― アモス、イザヤ、エレミヤと社会正義 預言者とは未来を占う者ではなく、いまここの不正に声を上げる者だった。富める者の貪欲を糾弾したアモス、正義を求めたイザヤ、滅びゆく都に涙したエレミヤ。彼らが叫んだ社会正義と王権批判は、後世にはかりしれない思想的遺産を残した。その声に耳を澄ます連載第12話。
- 13 王国の滅亡 ― サマリアとエルサレム、二つの陥落 南北に分かれたイスラエルの王国は、やがて古代オリエントの巨大帝国にのみこまれていく。北の王国は前722年にアッシリアに、南の王国は前586年に新バビロニアに滅ぼされた。二つの陥落のあいだに何が起き、人々は破局をどう受けとめたのか。メソポタミアの帝国史を背景に読む連載第13話。
- 14 バビロンの川のほとり ― 異郷で聖典が編み直された日 都も神殿も失い、はるばるバビロンへ連れ去られた人々。だが、この異郷での歳月こそが、旧約聖書という書物を今あるかたちへ編み上げる決定的な転機だったと考えられている。詩編137の嘆きを入り口に、捕囚という破局がなぜ豊かな実りを生んだのかを読む連載第14話。
- 15 だれが書いたのか ― 文書仮説をめぐる二百年の探究 旧約聖書の最初の五巻、トーラーはだれが書いたのか。同じ出来事が二度語られ、神の呼び名が場面によって変わる――こうした手がかりから、複数の資料が編み合わされたとする文書仮説が生まれた。ヴェルハウゼンのJEDP説から近年の議論まで、信仰の真偽には踏み込まず、聖書学の歩みとして読む連載第15話。
- 16 帰還と神殿再建 ― 律法を中心にした共同体の再生 ペルシアの王の勅令によって、捕囚の人々は故郷への帰還を許される。だが帰り着いた先は荒れ果てた都だった。神殿を建て直し、城壁を築き、律法を共同体の中心に据えていく――エズラとネヘミヤの再建の歩みを、アケメネス朝ペルシアの時代を背景に読む連載第16話。
- 17 黙示と終末、死者の行方 ― 捕囚後に芽吹いた新しい世界観 バビロン捕囚を経た古代ユダヤ社会に、それまでとは異なる世界観が芽生えていく。歴史の終わりを見すえる終末思想、死者がよみがえるという希望、そして幻と象徴で語る黙示文学。ダニエル書を手がかりに、迫害の時代が生んだ新しい想像力をたどる連載第17話。
- 18 知恵と嘆き ― 答えの出ない問いに向き合った書物たち なぜ正しい者が苦しむのか。生きることに意味はあるのか。ヨブ記、コヘレトの言葉、そして詩編。旧約聖書のなかには、信仰の確信だけでなく、深い懐疑や嘆きを正面から見すえた書物がある。人類最古級の思索文学として、これらの知恵の書を読み解く連載第18話。
- 19 砂漠が守った言葉 ― 死海文書と、聖書が定まるまでの旅 1947年、死海のほとりの洞窟で、二千年ぶりに古い写本が見つかった。死海文書の発見は、聖書のテキストがどう伝えられてきたのかを問い直す出来事だった。写本の書き写し、ギリシャ語訳、そして正典の確定。旧約聖書という書物そのものの歴史をたどる連載第19話。
- 20 約束の地から、日本へ ― 旧約聖書が映した近代日本 古代オリエントで生まれた書物は、明治の開国とともに、ようやく日本語の世界へたどり着いた。聖書の和訳、無教会という独自の運動、近代文学への影が。他国の古い宗教書が、なぜ日本の近代と言葉に影を落としたのか。連載日本語版の締めくくりとして、旧約聖書と日本のかかわりをたどる最終話。