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スペイン撃破と「三笘の1ミリ」 — 2022⑤

崖っぷちの最終戦、相手は世界王者スペイン。先制されながらも後半に堂安律と田中碧が3分間で逆転。決勝点を生んだのは、ゴールラインを割る寸前で折り返した「三笘の1ミリ」だった。VAR判定の真実とともに、E組1位通過を決めた歴史的な夜を、その一点に凝縮して掘り下げる。

2026年6月23日

2022年12月1日。崖っぷちの日本が迎えた最終戦の相手は、世界王者スペイン。ボールを保持して相手を支配する、現代サッカーの一つの完成形である。引き分けでも他会場の結果次第という不安定な状況のなか、日本は再び、誰も予想しなかった逆転劇を演じることになる。

  1. 前半11分

    スペインのモラタにヘディングで先制を許す。前半は一方的に押し込まれる。

  2. 後半48分

    堂安律が強烈なシュートで同点。日本がスイッチを入れる。

  3. 後半51分

    三笘の折り返しを田中碧が押し込み2対1。「三笘の1ミリ」が生んだ決勝点。

前半、支配される日本

試合は、スペインのペースで進んだ。圧倒的なボール保持で日本を自陣に押し込み、前半11分にはモラタのヘディングで先制する。この時間帯のスペインのパス回しは見事で、日本はボールに触ることすらままならない。前半のボール支配率は、スペインが大きく上回っていた。

ハーフタイムを迎えた時点で、誰もがスペインの順当な勝利を予感していた。だが日本のベンチは、後半に勝負を懸けるべく動く。前半をしのぎ切ったこと自体が、後半の反撃への布石だった。崖っぷちで、もう守りに入る選択肢はない。日本は後半、一気にギアを上げる。

3分間の逆転、そして「1ミリ」

後半が始まると、流れが変わる。後半48分、堂安律がペナルティーエリア手前から右足で豪快なシュートを突き刺し、同点に追いつく。スタジアムが沸いた、その直後だった。

後半51分、運命の一点が生まれる。ゴール前へ送られたボールが右へ流れ、ゴールラインを割るかに見えた。だが三笘薫が最後まであきらめずに追いつき、ライン上で執念の折り返し。このボールを田中碧が押し込み、2対1。スペインを逆転した。

問題は、三笘が折り返した瞬間、ボールがゴールラインを完全に越えていなかったか、だった。肉眼ではほぼ「アウト」に見えた。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)による検証が行われ、真上からの映像で確認した結果、ボールはわずかに線上に残っていた——ボール全体がラインを越えてはいなかった、と判定され、ゴールが認められた。世にいう「三笘の1ミリ」である。

E組1位通過の歴史的意味

2対1。日本は世界王者スペインを破り、「死の組」グループEを、なんと1位で突破した。ドイツとスペインという、ワールドカップ優勝経験国を2つとも撃破しての首位通過。これは日本サッカー史に残る快挙であり、世界に衝撃を与えた。

しかもこの結果は、ドイツの運命をも変えた。日本がスペインに勝ったことで、勝ち点や得失点差の絡み合いの末、ドイツはグループステージで姿を消すことになる。日本に2連敗にこそしなかったが、日本の躍進が、伝統国ドイツの敗退を引き寄せたのである。挑戦者だったはずの日本が、強豪の運命を左右する存在になっていた。

「三笘の1ミリ」は、技術と執念と判定が重なった、一度きりの奇跡のような一点だった。だがその裏には、ここまで積み上げてきたプランと準備があった。日本は確かに、世界の頂点と対等に戦う場所まで来ていた。次に待つのは、前回大会の準優勝国クロアチア。決勝トーナメントの死闘が始まる。物語はクロアチア戦へと続く。

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