フロンティアの、その先へ — 北海道が向き合う現代
食料基地へと育った北海道は、いま新たな現実に向き合う。札幌への一極集中、多くの自治体を覆う過疎、揺らぐ産業。その一方で観光や新しい技術が未来を拓こうとしている。連載の最終章として、大地・統治・暮らしの物語を閉じる。
2026年7月7日
先住の文化と、各地から集った人々の暮らしとが混ざり合い、北海道は豊かな食料基地へと育った。だが、この島の物語は、成功の余韻だけで閉じることはできない。人工的に、短い時間のうちに築かれた大地は、いま独特の課題に直面している。
一極集中と、広がる過疎
北海道の人口は、いま札幌へと激しく集まっている。道の人口のおよそ38%が札幌市に暮らすとされ、周辺を含めれば、道民の半分近くが、北海道全体のわずか数パーセントの面積に集中しているという。都市が膨らむ一方で、その外側では、人口の流出が止まらない。
その現実を数字が物語る。北海道の179市町村のうち、149もの自治体が過疎地域に指定されているとされる。かつて開拓者たちが汗を流して拓いた土地の多くが、いま担い手を失いつつある。フロンティアとして人を惹きつけた大地が、こんどは人を送り出す側に回っている——それが現代北海道の、静かな現実である。
揺らぐ産業の足場
産業の構造にも、この島ならではの弱さがある。北海道の第二次産業——製造業の比重は、全国平均の半分以下にとどまるとされる。かつて近代を動かした石炭産業は、一九六〇年代のエネルギー転換によって次々と炭鉱を閉じ、多くの炭鉱の町が姿を消していった。豊かな一次産業を持ちながら、それを加工し付加価値を生む製造業の層が薄いことは、この島の経済の課題として長く語られてきた。
その先へ、開こうとする未来
だが、この島は課題の前で立ち止まっているわけではない。一九七二年の札幌オリンピックを一つの契機として、北海道は観光地としての魅力を国内外に広く知られるようになった。雪質を求めて世界から人が集まるニセコ、花畑の広がる富良野をはじめ、雄大な自然そのものが、この島の大きな財産となっている。二〇二四年には、訪日外国人の宿泊がおよそ892万人にのぼったとされ、観光は北海道経済の新たな柱へと育ちつつある。
さらに、広大な土地と空を生かした新しい試みも芽生えている。大樹町などでは、ロケットの打ち上げを担う宇宙港を目指す取り組みが進められている。米が実らなかった大地は、いまや、空の彼方へと人の営みを届けようとする場所にもなろうとしている。
思えば、北海道の歴史とは、「不利」を「独自」へと変えつづけてきた歩みだった。稲作を拒んだ大地は畑作と酪農の王国となり、辺境の島は国家の北門となり、そしていま、過疎と一極集中という新たな逆境のなかで、次の姿を模索している。
アィヌモシㇼと呼ばれた大地から、蝦夷地を経て、北海道へ。先に生きた人々の記憶を足元に抱えながら、この広大な島は、これからもまた、その大地に問いかけられた答えを探しつづけていく。三つの海に抱かれた地平線の彼方に、次の物語が、静かに待っている。
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