← CHRONICA トップへ
連載 ・ 全10話
核の時代 ― 太陽を盗んだ人類
1938年の冬、ベルリンの実験室でウランがふたつに割れた。ハーンとシュトラスマン、亡命したマイトナーとフリッシュが見抜いたのは、星を輝かせる力の正体だった。アインシュタインの手紙、E=mc²、そして科学者たちが抱いた予感をたどる、核の世紀の幕開け。
- 01 太陽を盗む ― 原子の扉が開いた日 1938年の冬、ベルリンの実験室でウランがふたつに割れた。ハーンとシュトラスマン、亡命したマイトナーとフリッシュが見抜いたのは、星を輝かせる力の正体だった。アインシュタインの手紙、E=mc²、そして科学者たちが抱いた予感をたどる、核の世紀の幕開け。
- 02 砂漠の悪魔 ― マンハッタン計画 ニューメキシコの荒野に、地図に載らない街が生まれた。グローヴス将軍とオッペンハイマー、世界中から集められた頭脳、そして1945年7月16日のトリニティ実験。最初の人工の火が砂漠を照らした瞬間、科学者たちが抱いた高揚と恐れをたどる、マンハッタン計画の物語。
- 03 8月の閃光 ― ヒロシマとナガサキ 1945年8月、広島と長崎に原子爆弾が落とされた。一発の爆弾が一つの街を奪うという、人類が初めて経験する出来事だった。犠牲者数は推計に幅があり、投下の是非をめぐる評価も今なお分かれる。被爆者と犠牲者への敬意をもって、あの夏に起きたことを静かにたどる第3話。
- 04 恐怖の均衡 ― 滅びを担保にした平和 原爆を独占したアメリカに、ソ連が追いつく。やがて両国は原爆をはるかに上回る水素爆弾を手にし、相手を何度も滅ぼせるほどの核を積み上げていく。互いの破滅を担保に戦争を防ぐ「相互確証破壊」という奇妙な論理が世界を覆った冷戦の核軍拡を描く第4話。
- 05 13日間 ― 世界が滅びかけた秋 1962年10月、ソ連がキューバに核ミサイルを運び込んだ。海上封鎖、撃墜された偵察機、海中で発射を踏みとどまった一人の将校――人類が核戦争に最も近づいた13日間を、ケネディとフルシチョフの瀬戸際の選択とともに、史実に沿ってたどる。
- 06 広がる火種 ― 核クラブとNPTの矛盾 米ソに続き、英・仏・中、そしてインド・パキスタンへ。核を持つ国は次々に増えていった。拡散を食い止めようとして生まれた核拡散防止条約(NPT)は、しかし「持つ国」と「持たざる国」を線引きする不平等という矛盾も抱え込む。広がる火種の歴史を中立にたどる。
- 07 見えない雨 ― 死の灰が降った海と、目覚めた世界 1954年3月1日、太平洋のビキニ環礁で人類史上有数の威力をもつ水爆が炸裂した。降り注いだ白い灰は、はるか離れた漁船の乗組員を、そして世界各地の大地を静かに汚していく。見えない雨の代償と、その雨に抗って立ち上がった人々の物語。
- 08 減らす交渉 ― 七万発の核を、どう手放すか 増やすことしか知らなかった米ソが、初めて核を減らすテーブルについた。SALTからSTART、そして一つの兵器の種類を丸ごと消したINF全廃条約まで。冷戦の終わりとともに進んだ軍縮の長い道のりと、それでもなお残る膨大な核を見つめる。
- 09 制御できない平和 ― 拡散とテロの時代 冷戦が終わっても、核の脅威は消えなかった。むしろ、力の輪郭はぼやけ、見えにくくなっていく。北朝鮮の核開発、イランの核問題、ひとりの科学者が築いたとされる核の闇市場、そして核テロへの懸念。冷戦後に静かに広がっていった拡散リスクを、公的事実と報道の範囲で中立にたどる第9話。
- 10 核なき世界は夢か ― 廃絶と抑止のあいだ 原子の扉が開かれてから、人類はこの火とともに八十年近くを生きてきた。2017年に採択され2021年に発効した核兵器禁止条約、その背後にある被爆者の声、そして核抑止論と核廃絶論という、いまも交わらない二つの考え方。核の未来と人類の選択を、どちらの立場にも与せず公平に見つめる最終話。