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連載 ・ 全10話

中東石油と覇権の100年

戦争でも産業でもなかった時代、地表に湧く黒い泥は石器を柄に留め、バビロンの城壁を接ぎ、ミイラを永遠にした。石油が「世界を支配する血液」になる前夜、人類は七万年ものあいだ、この泥を何に使っていたのか。

  1. 01 「魔法の泥」の時代 — 黒い液体が世界を動かす前 戦争でも産業でもなかった時代、地表に湧く黒い泥は石器を柄に留め、バビロンの城壁を接ぎ、ミイラを永遠にした。石油が「世界を支配する血液」になる前夜、人類は七万年ものあいだ、この泥を何に使っていたのか。
  2. 02 黒い黄金の発見 — チャーチルの賭けと1908年 一度もペルシャの地を踏まぬまま、全財産を荒野に注ぎ込んだ実業家がいた。天然痘と盗賊と灼熱の現場で、撤退命令の直後に噴き上がった一柱が、大英帝国の命運と中東の百年を決めた。1908年、石油が「国家の血液」になった瞬間の物語。
  3. 03 大戦と分割 — 国境線はこうして引かれた サイクスは地図を指し「アッコのeからキルクークのkまで」と線を引いた。砂漠で技師たちは「さらに深く掘れ」と穴を掘り続けた。洋上の巡洋艦で王と大統領が向き合った。第一次大戦から1945年まで、現代中東の骨格が組み上がっていく三つの現場を歩く。
  4. 04 セブン・シスターズと屈辱――1953年、奪われた革命 戦後の石油は「七人の姉妹」と呼ばれる7つの巨大企業が支配した。わずかな分け前に怒ったイランは1951年に石油を国有化するが、英の封鎖と英米情報機関の工作が、首相モサッデクを失脚させる。資源を取り戻そうとした最初の挑戦は、なぜ潰されたのか。
  5. 05 OPECの誕生 — 資源ナショナリズムの胎動 奪われた革命の屈辱を経て、産油国はついに「団結」を選んだ。1960年バグダッドで生まれたOPEC、リビアの若き大佐の強硬交渉、1971年テヘラン協定――静かに、しかし確実に、価格を決める手が西から東へ移り始める。
  6. 06 1973 — 石油が武器になった日 1973年10月、第四次中東戦争を引き金にアラブ産油国は石油を「武器」として抜いた。禁輸と大幅値上げで原油価格は数カ月で約4倍に。世界経済は大混乱に陥り、日本では紙が店頭から消えた。主導権は、ついにメジャーからOPECへ移る。
  7. 07 イラン革命と第二次オイルショック — 1979 石油の富で輝いていたはずのイランで、王朝が一夜にして崩れた。亡命先から戻った一人の老師ホメイニ、止まる油田、再び跳ね上がる原油価格。世俗の近代国家が宗教国家へと姿を変え、米イラン関係は断絶した。第二次オイルショックの全貌。
  8. 08 二つの戦争 — イラン・イラク戦争と湾岸戦争 革命の余波は、隣り合う二大国を油田の上で激突させた。8年に及ぶ泥沼のイラン・イラク戦争、ホルムズ海峡を緊迫させたタンカー戦争。そして借金まみれのフセインはクウェートへなだれ込む。湾岸戦争と、空を黒く染めた油田の炎。
  9. 09 イラク戦争 — 大義と石油のあいだ 2003年、米英は「大量破壊兵器」を掲げてイラクに侵攻した。フセイン政権は3週間で崩れたが、その後に待っていたのは見つからない兵器、宗派対立、終わりの見えない泥沼だった。大義と石油利権のあいだで、いまも問いは消えない。
  10. 10 シェール・米中・脱炭素 — 黒い黄金のその後 アメリカはシェール革命で世界最大級の産油国になり、中東への執着を解き始めた。代わって最大の買い手となったのは中国。2023年には中国が仲介してサウジとイランが和解する。100年の物語は、いま私たちが読むニュースの中で続いている。最終話。