ドイツとスペインを倒した夜 — 2022
「死の組」と呼ばれたグループで、森保ジャパンは優勝経験国ドイツとスペインを相次いで撃破し、首位で決勝トーナメントへ進む。三笘の1ミリ、長友の「ブラボー」——歓喜の記憶。だがクロアチアとのPK戦が、またしてもベスト8の扉を閉ざした。新時代の到達点と、なお残る宿題の物語。
2026年6月28日
2022年、ワールドカップは初めて中東カタールで、しかも例外的に冬に開かれた。森保一が率いる日本が組み込まれたグループEは、過去にワールドカップを制したドイツとスペインがそろう「死の組」だった。多くの専門家が、日本のグループ突破は難しいと見ていた。だが、その予想は鮮やかに裏切られることになる。
- 2022年11月23日
初戦ドイツに2対1。堂安律と浅野拓磨のゴールで逆転勝利。
- 2022年12月1日
スペインに2対1。堂安律と田中碧のゴールでグループ首位突破。
- 2022年12月5日
決勝トーナメント1回戦、クロアチアと1対1。PK戦の末に敗退。
ドイツ撃破、逆転の物語
初戦の相手は、4度の優勝を誇るドイツ。前半33分、日本はPKでギュンドアンに先制を許す。さらに何度もチャンスを作られ、前半だけで試合が決まってもおかしくない内容だった。だが日本は耐え、後半に勝負を懸ける。
森保監督は後半、攻撃的な選手を次々と投入し、流れを引き寄せた。後半30分、堂安律がこぼれ球を左足で叩き込み同点。そして後半38分、浅野拓磨が右サイドを抜け出すと、トラップから角度のないところでGKの頭上を撃ち抜く強烈なシュートを突き刺した。2対1。日本は、ワールドカップ優勝経験国ドイツを逆転で破ったのである。番狂わせは世界中を駆けめぐった。
三笘の1ミリ、スペイン撃破
第2戦コスタリカ戦は0対1の不覚を取り、突破は最終戦に持ち越された。相手は、ボール保持で世界を圧倒するスペイン。引き分けでも条件次第というなか、日本は再び劇的な逆転劇を演じる。
前半にモラタの先制を許したが、後半開始直後の48分、堂安律がまたしても豪快なシュートで同点。その3分後、運命の一点が生まれる。右へ流れるボールを三笘薫が執念で追い、ゴールラインを割る寸前で折り返した。このクロスを田中碧が押し込み、2対1。ボールがラインを越えていたのではないかと疑われたが、VARの検証の結果、ボールはわずかに線上に残っていたと判定され、ゴールが認められた。世にいう「三笘の1ミリ」である。日本はドイツとスペインという二つの優勝経験国を破り、グループEを首位で突破した。
クロアチア戦、またもPKの壁
歓喜のなかで迎えた決勝トーナメント1回戦。相手は、前回大会の準優勝国クロアチアだった。前半43分、日本は前田大然がゴール前のこぼれ球を押し込み先制する。史上初のベスト8が、再び現実味を帯びた。
だが後半55分、クロアチアの名手ペリシッチに見事なヘディングを決められ同点。試合は一進一退のまま延長戦に入り、それでも決着がつかず、勝負はまたしてもPK戦へと持ち込まれた。
2010年のパラグアイ戦と同じ、最も残酷な決着。日本は南野拓実、三笘薫、吉田麻也のキックが相手GKに止められ、1対3で敗退した。ドイツとスペインを倒したチームが、ベスト8の扉の前で、またしてもPKに泣いた。歓喜と落胆が交錯する、忘れがたい一戦だった。
到達点と、残された宿題
2022年の日本は、ワールドカップ優勝経験国を2つ倒すという、かつてない快挙を成し遂げた。「世界の壁」と呼ばれてきたものを、日本は正面から突き崩してみせた。長友佑都がスペイン戦の勝利後に叫んだ「ブラボー」は、その夜の歓喜を象徴する言葉として、列島に広がっていった。
それでも、ベスト16という最高成績の枠は、ついに破れなかった。1998年の初出場から、日本はジョホールバルの歓喜、自国開催の祝祭、ロストフの14秒、そして死の組突破まで、四年ごとに物語を積み重ねてきた。世界と互角に戦う力は、もう疑いようがない。残された宿題はただひとつ——ベスト16の、その先へ。日本代表の軌跡は、いまも未完のまま、次の四年へと続いていく。
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