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開く国か、閉じる国か ― 移民をめぐる世界の視線

2024年末、日本の在留外国人は376万人と3年連続で過去最多を更新した。少子化で労働力が細るなか、世界は「日本は移民国家になるのか」と問う。技能実習をめぐる人権面の指摘、新制度への期待と不安、開放論と慎重論――どちらにも一方的に与せず、移民と多様性をめぐる視線を中立にたどる第6話。

2026年6月13日

前回、私たちはジェンダーギャップという「内側の多様性」をめぐる世界の視線を見た。今回問うのは、もう一つの多様性――「外から来る人々」を、日本がどこまで受け入れるのか、という主題である。海外メディアはしばしば、相反する二つの見出しで日本を語る。一方では「世界有数の閉ざされた国」、他方では「気づかないうちに移民国家になりつつある国」。この矛盾するような評価は、どちらも一面で正しく、どちらも一面で誤っている。少子化で人口が細る国が、扉をどこまで開くのか。本連載の流儀どおり、開放論と慎重論のどちらにも肩入れせず、数字と各国の論調を並べていく。

  1. 1993

    技能実習制度が始まる。途上国への技能移転という国際貢献を建前としつつ、実態として労働力の受け皿となっていったとされる。

  2. 2019

    特定技能制度が創設される。人手不足が深刻な分野で外国人材を受け入れる、事実上の門戸拡大とされる。

  3. 2024

    技能実習に代わる育成就労制度の関連法が成立。転職の制限緩和などが盛り込まれたとされる。

  4. 2024

    年末時点の在留外国人が約376万人と、3年連続で過去最多を更新したとされる。

「閉ざされた国」が、静かに変わっていた

まず数字から見よう。出入国在留管理庁によれば、2024年末時点の在留外国人は約376万人にのぼり、前年から1割以上増えて3年連続の過去最多となった。これは日本の総人口のおよそ3%にあたる。外国人労働者の数も増え続け、近年は数百万人規模に達しているとされる。出身地は中国、ベトナム、韓国などが上位を占め、とりわけベトナムからの増加が目立つ構図である。

3%という数字は、移民比率が1割を超える欧米の多くの国と比べれば、まだ低い水準である。ここから「日本はやはり閉ざされている」と読むことはできる。しかし同時に、増加のスピードは速く、政府の従来想定を上回るペースだという指摘もある。コンビニや飲食店、介護や農業、製造業の現場で外国人材なしには回らない地域や業種は、もはや珍しくない。「制度上は移民国家を否定しながら、現実には外国人に支えられている」――海外メディアがしばしば使うこの構図は、誇張ではあっても、的を外してはいないのだ。

ここで言葉の整理が必要である。日本政府は長く「移民政策はとらない」という立場を公式には保ってきた。期限つきの就労として受け入れる、という建前である。一方、国際的には、一定期間以上その国で暮らし働く人を広く「移民」と呼ぶことが多く、その定義に立てば日本はすでに相当数の移民を受け入れている、と見ることもできる。同じ現実を、呼び方一つで「閉ざされた国」とも「変わりつつある国」とも描ける――その二重性が、評価を割れさせる一因である。

技能実習をめぐる、厳しい国際的まなざし

世界が日本の受け入れ制度を語るとき、最も厳しい視線が注がれてきたのが技能実習制度である。1993年に始まったこの制度は、途上国への技能移転という国際貢献を掲げていましたが、実態としては人手不足を補う労働力の供給路として機能してきた、という見方が広く共有されている。

問題視されてきたのは、人権の側面である。国際人権団体や各国政府の報告書は、最低賃金を下回る賃金、長時間労働、転職の自由が乏しいことによる弱い立場、パスポートの取り上げや、妊娠を理由とした不当な扱いといった事例を繰り返し指摘してきた。たとえば「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」などの国際的な人権報告は、この制度を強制労働や人身取引のリスクと結びつけて論じてきたとされる。実習先から失踪する人が年に数千人規模で生じてきたことも、制度のひずみを示すものとして報じられてきた。

もっとも、ここでも一方的な断罪は避けるべきだろう。受け入れ企業の多くは制度の枠内で誠実に運営しており、問題は一部に集中しているという反論もある。また、来日した本人にとっては、母国より高い収入を得られる現実的な選択肢であった、という側面も無視できない。制度の構造的な欠陥を直視することと、関わるすべての人を加害者扱いすることは、別のことである。批判の核心は「個々の悪意」ではなく「逃げ場のない仕組み」にある――そう捉えるのが正確だと思われる。

新しい制度と、開放・慎重の両論

こうした批判を背景に、日本は制度の見直しに動いた。2024年には、技能実習に代わる「育成就労」制度の関連法が成立し、数年の移行期間を経て2027年ごろに本格的に始まる予定とされる。一定期間の就労後に同じ分野での転職を認めるなど、これまで批判されてきた点に手を入れる内容が盛り込まれた。

この新制度をどう評価するかも、見方が分かれる。前向きに見る立場は、転職の制限緩和や人権配慮の強化を、長年の課題への一歩前進と捉える。受け入れを正面から認める方向へ近づいた、と評価する声である。一方、慎重・批判的に見る立場は、転職を認める条件があいまいで、運用次第では実態が大きく変わらない恐れがある、と指摘する。看板を掛け替えただけに終わらないか、という懸念である。どちらの見方にも根拠があり、結論は制度が実際に動き出してからでなければ見えてこない、というのが公平なところだろう。

さらに、その奥には社会のあり方をめぐる、より大きな両論がある。開放を求める立場は、急速な少子高齢化のなかで労働力を確保し、社会の活力を保つには、外からの受け入れ拡大は避けられないと論じる。これに対し慎重な立場は、急な受け入れは賃金や治安、社会保障への影響を伴いうるとして、合意形成や受け入れ環境の整備を先に求める。受け入れる側の暮らしと、来る人の尊厳――その両方を満たす着地点はどこにあるのか。世界が日本に問うているのは、まさにこの綱引きの行方なのだ。

世界の視線は、ここでも一様ではない。日本の慎重さを「秩序ある受け入れ」と評価する声もあれば、「人口減少という現実に向き合えていない」と苦言を呈する声もある。開く国になるのか、閉じる国であり続けるのか。その問いに、日本はまだ明確な答えを出していない。そして、答えを出せずにいること自体が、急ぐべきか慎重であるべきかという、世界共通の難問の難しさを映してもいるのだ。

経済、ジェンダー、移民――こうして私たちは「いまの日本」をめぐる世界の視線をたどってきた。けれど、海外から日本を語るうえで、どうしても避けて通れないもう一つの領域が残っている。それは、過去をめぐる記憶である。次回は、歴史認識と近隣外交をめぐる多様な見方を、日本と近隣のいずれにも一方的に与せず、できるかぎり公平に並べていく。

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